涙腺、緩みっぱなし


 喜びで枕を濡らしながら、朝、目を覚ますなんて、初めてのような気がする、

 ヘタレな私は、Webを開いて一人で見る勇気もなく、かといって息子と二人で掲示板を見に行くのも恐ろしく…。でも、合格の感激は息子と共有したいという欲張りな思いの末、私は、キャンパスの外で息子のメールを待ち、合格していたら初めて敷地内に足を踏み入れ、掲示板の前で合流するを作戦をとった。

12:00。もう発表を見た人達が、無言で帰っていく。「(あんなに早く帰るって、だめだったのかなあ)」…。なんて自分の身に置き換えて見てる私。

「(何してるんやろ!はよぉ、連絡しておいでぇさ!)」

 心臓が口から飛び出してくるんじゃないかと思うほどの緊張感で、メールを開く。

「合格してたよ〜」

 涙があふれ出しそうになるのを必死にこらえながら、準備しておいたキャンパスマップを見ながら走りだす…。
「(どこなん?どこなん?)ここは何学部ですか?」…そばで、上級生がお祝いの餅つきをしている。「(ちがう、ちがう、ここちゃう。はよ、会いたいよぉ)」だんだん涙も乾いてくる。
 やっと息子の姿を見つけた。「よかったなあ。おめでとう。」肩を抱き合う。
それを目ざとく見つけた大学生が、即、勧誘のチラシを渡しにくる。業者さんが「お住まいはお決まりですか」と声をかけに来る。

「お前、心配するやないか!」と同大学異学部を受験した息子の親友二人が笑いながらそばに来る。大学までは一緒に来たのだけど、それぞれの学部前の掲示板を見たあと、正門前に集合することになっていたらしい。でも、息子だけが来るのが遅く、だめだったんじゃないか心配させていたようだ。

 「3人で合格したい。誰が欠けても喜べない。3人で行くことに価値がある。」これが口癖だった息子。他の二人は毎回A判定をもらっていて、唯一、足を引っ張る可能性があるのは息子。その願いをかなえられて、本当にうれしそう。撮った写真の3人は、本当にとびきりの笑顔をしていた。

 政治のアジテーションをする拡声器の声、サークルの誘いに思わずサインをしてしまっている合格者、ケータイで連絡する人…。しばし、この喧噪のなかで子供たちの笑顔を見ながら余韻に浸っている私。中学受験の時は、まさに号泣だった。でも、今回は、じんわり来ている。遅れて駆けつけられたお友達のお母さんと合流し、しばし喜びを分かち合う。次々と入るメールや電話に対応しながら移動する。

 そのあと、子どもたちは、高校へ報告に向かった。
 私は、今夜の祝宴の買い出しと合格旅行の予約へ行く。合格祝いの大きなケーキ二つに、それぞれ息子と娘の名前を入れてもらった。娘の合格祝いをこんな時期にまで先延ばししてしまい、反省。ダブル受験の宿命。

 家に帰ると息子も帰宅していた。高校で聞いてきたクラスメートの合否を聞かせてくれる。慣れ親しんだ名前の結果を聞くたびに、涙があふれてくる。掲示板の前で号泣しなかった分、ここで堰が切れたように涙があふれてくる。
 「全員が一緒に現役合格をします」。3年間担任をしてくださった先生がずっと言い続けておられた言葉。誰一人として落ちて欲しくない、みんな合格してほしい。クラスの結束力はすごかった。放課後に自発的に数学の補習をしてくれた天才クン。試験前には、世界史の重要単語の一覧をケータイに延々と送信してくれた秀才クン。親の力なんて微々たるもの、まわりのともだちの力で成長させてもらったと心から思っている。

 息子は朝から、いままでやってきた模試や問題集の処分作業をしている。うちは、自宅通学だからこのあとあわただしい別れが待っているわけではないぶん、さみしさはないけど、このボーダイな量の勉強をしてきたんだと思うと、またジワジワきてしまう。

 これまでの日々のいろんなことが頭をよぎり、昨夜は遅くまで話し込んでしまった。睡眠不足と泣きはらした目で、ひどい顔。

 こんな大きな喜びをくれた二人の子供たちにただただ感謝…。


※ 親バカなひとりごとにお付き合いくださり、ありがとうございました。
  普段は、10年日記の25mm×85mmの面積に、ペンで思いを書いていますが、その記録の代わりにということで、ご勘弁を…。