長年の…

 うちのムッシュは、誕生日を祝うという文化を持ち合わせていない。これはもう若いころにさんざん喧嘩をして、自分なりの結論で気持ちに区切りをつけていた…つもり。ジュエリーや小物は、プレゼントされるものじゃなくて自分の稼いだお金で買うもの…と思い込ませてきた。
 私は、家族の誕生日はもちろん、クリスマスには「一年間お疲れ様」のご褒美プレゼントを家族全員に準備するし、両親の誕生日や父の日・母の日には、それなりのことをしている。そういう区切りの習慣を私が大事に思っているということは、ムッシュには伝わっていると思う。
「誕生日の何がうれしいの?」
「健康でひとつ年をとれたことは、喜ばしいことなんじゃない?」
「モノ以外のもの(=精神的な愛情)をいっぱいあげてるじゃない?」
 ええ、確かにいっぱいいただいています。でも、でも…。帰り道にお花の一本でも、ケーキの一つでも買ってきて、「はい!」って渡す気にならない?「おめでとう」でも「ありがとう」でも、そのひとことが欲しい。私の男友達が奥さまの誕生日にお花を買って帰ったら「現金のほうがよかった」って言われたってずいぶん傷ついていた。私ならKissの嵐でありがとうを言うわ。
 だから、私は誕生日という日がきらい。年をとるからではなく、こういう悶々とした思いを伝えられないもどかしさ、腹立たしさ、自分の達観できていないちいささを再認識させられるから…。
 誕生日から数日間、ずっとイライラしている。誰にもはきだせない気持ちをキーボードに乗せて、気持ちに区切りをつけたいと思っている。