読書感想文

 娘が「読んでみて」と差し出したのは、学校が配布した読書感想文集。その中には、全国学芸科学コンクールで努力賞をもらった親友のYちゃんの作品が掲載されている。前々から「Yの文章は、まず漢字が読めへん」「国語の先生が大絶賛している」という話を聞いていたので、興味深く読ませてもらった。
 まず、坂口安吾の作品を選んでいることからびっくり。そして「嚥下」「困臥」「蔑んだ」「脆弱」なんていう難しい単語が連なっていることに驚かされる。そして何よりその深く考え、自分の気持ちを分析し、表現しているその力に衝撃を受けた。哲学的な文章構成。大学生の息子も「文学部の友達でもこんなん、書けへん…」
 子育てをしていると、その年齢に応じて他の子どもたちと比較してしまうシーンは今までにも多々あった。
 幼少期は、誰々よりも歩き始めるのが遅い、言葉の数が少ない、鉄棒の逆上がりができない…。渦中にいるときは、それはそれで一生懸命だったし、思いや悩んだりしてきた。だけど、今思えば、現時点で差があってもいずれ歩くようにもなるし、逆上がりもできるようになるんだから、そんなに深刻に考えることもなかったなあと、笑い話として思い出せる。
 中学生の頃は、スポーツができる子などは目立つけど、まっ、運動能力の差はどうしようもないから、違う面で秀でてくれたらいいと思えた。
 でも、この感想文を読んで、本質的に娘の足りないところが見えてしまった気がした。
「せめて、爪のあかでも煎じて…」なんてレベルでもない。「少しでもいい影響を…」なんておこがましい。
 Yちゃんとは、普段はばか話をし笑い合っているだけで、そんな小難しい話など一切しないらしい。Yちゃんはいったいどういう思いで、読書は一切しない、語彙力のきわめて乏しいうちの娘と一緒にいられるんだろう。
 せめて、「そういう人を和ませるだけの性格の良さがうちの子にはある」と思うことで、私の中の心の折り合いをつけよう。