帯のコピーは、何の参考にもなりません ―はじめての石田衣良作品―

眠れぬ真珠

眠れぬ真珠

 45歳の女性銅版画家と、28歳の今は才能を眠らせている映像作家の恋愛。…こう書くとなんか陳腐な使い古されたテーマのようですが、ここは作家の構成力・展開力と筆が超越させています。
 更年期にさしかかった女性の生理、心情を見事に表現していて、まさにマダム世代の心をピンポイントでついてきます。
図書館で借りた本だったので、線を引いたり端を折ったりして、心に留めておきたいフレーズをチェックすることができなかったので、今改めて読み直しているところです。
 こんな風なせりふがさらりといえたら…、ベッドでこんな風に振る舞えたら…が随所に。

 この青年との恋に落ちてもいいものかどうか迷う主人公に、母と慕う町枝がアドバイスする。

「(略)あなたは、今日を大事にしなさい。今日は、二度とないし、明日よりは必ず一日若いんだから。恋はここの張りじゃなく…」
中原町枝は頬にあてた手を、ピンクのスエットの胸に移した。
「…心の張りでするものよ」

 読んでいるときに「めざましテレビ」で放映された今注目の俳優加瀬亮さんの映像。この人の白シャツのイメージとこの28歳の男性主人公のイメージが見事に重なりました。映画化するなら絶対この人で!
 
 銅版画が見たくなりました。黒のイメージと白のイメージ。どこかの小さなギャラリーの展覧会を探してみます。