太陽の塔 森見登美彦

太陽の塔

太陽の塔

 現在は別の作品がベストセラーにランキングされているようですが、手に入らなかったのでまずはこちらから。
 「なんとも不思議な作品」が、感想です。
 京大5回生が描いた失恋までのいきさつと、「変人」ともおもわれそうな仲間たちと繰り広げられる学生生活を描いたもの…ではあるのですが、小説というより報告レポートのような様相です。随所にみられる理論的な堅い表現が、その出身大学らしい、というのは偏見でしょうか?そのまじめさゆえに、笑えます。
 漢字検定1級(受けたことはないのですが)に出題されそうな難しい漢字がいっぱい出てきます。そして京都に住んでいるからこそその雰囲気が理解できる京都の地名がいっぱい出てきます。たとえば「京阪電車深草あたりから右手に広がる日赤病院」とか「寺町を上がって葉巻の店をのぞく」とか、「ああ、あそこね」とすぐに景色が目に浮かぶので、私個人としてはとても楽しめました。でも、あの「ごきぶり」の描写だけは、勘弁して!