モリミー・ワールド

 

夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女

 前回読んだ太陽の塔に続く2冊目。すっかりモリミー・ワールドにはまってしまいました。
 何ていうんだろう、私とっては初めての文体で、奇想に満ちた満艦飾の世界が広がります。日常的に京都の景色や地名に触れている私にとっては、作品の中に広がる光景が現実味を帯び迫ってきます。
 東北大出身の伊坂幸太郎氏、そして京大出身の森見登美彦氏。年齢、経歴、人気度…よく似ておられます。しばらく前者の作品ばかり読みつづけていたので、私の中でどうしても比較してしまいます。伊坂氏の作品は、「色」がなく淡々とした感情を抑えた表現が続くのに対し、森見氏は、今まで遭遇したことのない難しい漢字を使いながら、ときに抒情的に、ときにはでに、ときに奇想天外なファンタジーの世界が広がります。
 片思いをする男子学生が、黒髪の後輩女子学生とはじめてのデートをするまでのストーリーではありますが、恋愛小説ではありません。偶然に会うという事実を重ねていき、いつか…という風に外堀ばかり埋めているその姿がいとおしい。後輩女子学生の丁寧な日本語が美しいです。

 9月1日、8日に「陣内・藤井のザ・レジェンド」という深夜番組で京大生たちの住む熊野寮の様子を紹介していました。寮費700円、4人部屋、その外観はスラムのようで、ビラが張り巡らされており、まさに個性的な学生たちが住む「伝説の」寮です。たまたまこの本を読んでいるときにその番組を見たので、そこに登場したちょっとこだわりのある男子学生、黒髪の女子学生と映像が重なってしまいました。

 電車の中では、暗記科目もしなければならないし、この本も読みたいし、息子がどうしようか迷っています。