「そうか、もう君はいないのか」

 ドラマや映画を観て、涙を流しているのはたいていムッシュ。「(富司純子さんの演技、もう少し抑えめの方が…)」なんて辛辣な言葉を胸に秘めながら冷やかに観ているのが私…。ドラマ終了後、ムッシュがさりげなく洗面所へ立ったの、背後で感じたわよ。
 そんな私でもやっぱり、「うっ」と来てしまうシーンがいくつか。夫婦を長年やっていれば、ドラマと似たような設定を経験したことはあるわけで、その当時のことを思い出してはその時のシーンと重ねてしまう。辛い告知を受けたあと、夫の胸になだれ込む妻、それを両手を広げて受け入れる夫。不安な夜にそばにいてほしいと頼む妻…。
 やっぱり私の方が、一日でも長く生きた方がいいのかな。

 「うちの場合は、『寝息』じゃなくて『歯ぎしり』だけどね…」と、ムッシュの反撃。