「ニューヨークのとけない魔法」岡田光世(文春文庫)

ニューヨークのとけない魔法 (文春文庫)

ニューヨークのとけない魔法 (文春文庫)

 ジャーナリストとしてニューヨークに滞在する筆者が、そこでの生活で遭遇した様々な出来事を英文1つをからめて紹介するエッセイ。
 中でもいちばん好きな話は「双子の母のため息」。
 なかなかやってこないバスを待っていた作者の夫と黒人の女性。なんとなく会話が始まる。その女性は離婚して、一人で双子の子供を育てている。仕事もしんどい。疲れ切った様子。そんな彼女に、自分も双子である夫が、制服を取り替えた兄と入れ替わってそれぞれの学校に登校した笑い話などをする。双子もなかなかいいもんですよ、と。
 やがてバスが来て、2人は乗り込む。その女性が降りるときに夫に言う。

 I really enjoyed talking with you. You made my day.
 話ができてとても楽しかった。おかげで、今日一日がとてもいい日になったわ。

ニューヨークは怖い街、というお決まりの印象しかない私。でも、この中に綴られている小さな日常を見ていると、1ヶ月くらい滞在したくなってしまった。