遺品整理

 …というほど、立派なものは何もないのだけれど…。
 最後は、片付けることもできなくなっていたし、買ったものも忘れてしまっていたのだろう、とにかく新しいもの古いものがごっちゃになって大量に部屋に残された。

 はき古したソックス・タイツ類だけゴミ袋に2つ以上。かと思えば、デパートで購入したそれなりの値段の服、コート、バッグ、靴…たくさんのものがタグ付きのまま箱に入っている。私たちがプレゼントしたものも新品のまま残されている。着物はすでに処分してあったから1枚もなし。宝飾類も全く興味がなかったからなし。


 身に着けておしゃれをすることよりも「買う」ことそのものが好きだった母。店員さんとやりとりをする時間そのもの楽しんでいたようだ。とても80歳を超えた老女には不釣り合いな若者ブランドの店も、「愛想のいい店員さんを気に入ってよく行っていた」と姪から聞いた。


 それらの大量の品々を捨てるもの、同年齢の人にさし上げて失礼のないもの、私たちでも着れそうなもの…と選別していく。「この服はあの時、着ていたなあ」なんて考えだすと手が止まってしまうからつらい作業でもあった。
 ほとんどのものを義姉のお母様に宅配便で送った(段ボール3つ分)。そして若い人も着れそうなものは、ほとんど義姉とその娘たちに譲った。今後父のそばにいていろいろお世話になるのはその人たちだし、少しでも心象をよくしておきたいとの思いがあった。私は、私が贈ってあげた服と見覚えのあるペンダントだけを形見として手元に残した。


 あえて日記や手帳を読むことはないけど、望郷の念や父への不満など、箱のふたなどに見慣れた母の字で走り書きがしてあるのを見つけたりすると、「もっとああしてあげていたら…」との思いがよぎってしまう。

 
 予定通り2週間で退院してきた父の生活を整えることに追われ、あわただしい日々。
 母が亡くなってからまだ1か月も経っていないことが信じられない。というか、曜日・日にちの感覚がない。