岸恵子「わりなき恋」

わりなき恋

わりなき恋

なんで「岸恵子 自伝小説」として売り出されなかったんでしょう?
 作者のインタビューでは、「ご自身の体験談ですか?」の問いに「想像におまかせします」的なニュアンスで答えておられましたから、そうなんでしょうが…。

 付き合い始めの主人公(女)の年齢69歳 男60歳前。その二人の7年間の恋愛話が続いていく。当然、嫉妬、甘いデート、「あんなこと、こんなこと」もあるわけで、そこに世間一般的な70歳の女性の姿を重ねることはものすごく難しく、違和感だらけ。一般的な75歳でこんな恋愛感情を持って生活している人は、どれくらいいるのだろう。
 もしこの主人公の女性が「岸恵子さん」そのものなら、とてもイメージが描きやすいのです。あんなにコケティッシュできれいで聡明な方なら、こんな恋愛も「あり」と思えるのですが。


 そして、この人の文体はやたら読点が多くて、トツトツと気持ちが分断されてしまうのには参りました。
 とにかく最初から最後まで集中できない作品でした。