林真理子 「秋の森の奇跡」

秋の森の奇跡

秋の森の奇跡

 マダムのおしゃれ発信雑誌「Precious」の連載小説をまとめたもの。
 林真理子さんのエッセーは、ほとんど読んでいるので、随所にエッセーのネタが入っているのも興味深い。
 いままでの彼女の小説独特のトレンディーさはなく、取り上げられてこなかった「介護」、「まだら呆け」などが登場するのに、筆者の年齢の移り変わりを感じます。
 母の介護問題に絡めて発生する同居している兄夫婦との軋轢、いちばん頼りにしたい夫への不信感の表面化、あとは老いていくだけの自分の最後の恋、などなど、40代女性をターゲットとしたテーマが、タイムリーにつぎつぎと出現。今の気持ちにぴったりきます。
 月刊誌の読者の気持ちをつなぎとめるために、ストーリーにメリハリが必要なのはわかりますが、不倫対象の男性が2人も登場するのはちょっといきすぎ。現実では、不倫どころか「すてきだな」と思える男性に遭遇するのさえも難しいのですから。