伊坂幸太郎「終末のフール」

終末のフール

終末のフール

 伊坂幸太郎作品もこれで5冊目か…。今まで読んだ中で、私にはいちばんぴったりきました。今までの作品は、放火・動物虐待・バラバラ死体などが扱われていて、謎解きの要素が大きかったのですが、この作品は、心理描写が秀逸です。
 8年後に小惑星が地球に衝突すると全世界に情報が流れ、暴動・略奪・自殺などで地球はパニック状態に陥ってしまった。そこまでは誰でも想像がつくのですが、この作品は、そんな騒動から5年たって小康状態を迎えたひととたちの様子を描いています。レイよって舞台は仙台。あるマンションに住む人たちに作家得意の関係性を作りながら、彼らの心の動きを短編8つに描いています。
 私は、「太陽のシール」が好きだったな。この期に及んで、妊娠が判明した30代の夫婦。生むのか生まないのか…。何気ない夫婦の会話。そのへんは、さすが伊坂さん、隅々まできっちり計算されています。

 この作品を読むきっかけになったのは、関西ローカル夕方の番組「ちちんぷいぷい」。木曜日に西アナウンサーが本を紹介するコーナーがあり、そこで取り上げられていました。
 西アナウンサー、ものすごく本を読んでいらして、そのプレゼンがものすごく上手です。ただの紹介だけではなく、「こっちがヒットしているけど、まずあっちから読んだほうが話がわかりやすい」とか、非常に丁寧で読む気にさせる解説です。あの髪の薄さも、あのお人柄も大好き。密かに応援しているコーナーです。