重松清「送り火」

送り火

送り火

「富士見」という地名をキーワードに展開される9つの短編集。
 重松さんという作家は、「きよしこ」「エイジ」に代表されるような少年を主人公にした作品と、「ビタミンF」に代表されるような40才前後の男女の心情を描いた作品、「流星ワゴン」に代表されるようなSFファンタジーっぽい作品を書いておられます。
 私がいちばん好きなのは、中年夫婦の微妙な心のひだ、日々のざらつきなどの描き方。
 そういう意味でも、子供を亡くした夫婦のその後を描いた「かげぜん」は秀逸でした。