顔見世

 京都に住んで数十年。初めて京都の師走風情を満喫してきました。



 ・正札附根元草摺(しょうふだつきこんげんくさずり)
 ・八陣守護城(はちじんしゅごのほんじょう)
 ・藤娘(ふじむすめ)
 ・梶原平三誉石切り(かじわらへいぞうほまれのいしきり)
 ・ぢいさんばあさん


感動的な経験でした。
 なにせ、歌舞伎は超初心者の私。はたしてついていけるか、また無知ゆえにロビーで恥をかかないだろうかなどなど、心配は尽きませんでした。当日までに、Webで歌舞伎を見るときの心得を読み、演目の概略を読み、出演者のお名前とお顔を一致させにわか勉強です。

 「ふむふむ、一般的に幕間は30分くらいね。そこでお弁当か」
 「『くどき』って女の人がするんや…」
 「片岡仁左衛門さんは、昔の片岡孝夫さんやな。あのイケメンの…」


 開演前にロビーでイヤホンガイドを借り、(映画でいうところの)パンフレットを購入し見どころを頭に入れます。イヤホンガイドは「マスト」です。650円は、決して高くありません。難しい古語、衣裳の意味、浄瑠璃のセリフを絶妙なタイミングで言ってくださるので、本当によく理解ができます。

 77歳の坂田藤十郎さんの藤娘。後ろの席の通らしき方が「藤十郎はんも歳とらはったな」と批評しておられましたが、どうしてどうして、私にはすばらしい舞に見えました。あのお歳であのポーズをキープするのがどんなにつらいか。
 片岡仁左衛門さんの色っぽい流し目、中村吉衛門さんのぞくぞくするようなミエ、坂東玉三郎さんの妖艶な所作…。市川海老蔵さんのイケメンぶりは群を抜いています。TVで観るよりずっと細面で鼻がお高い…。

 人が幕をひくタイミングや、薄幕を落としたときに一気に現れるあでやかな光と唄や三味線の人たち、桜の花弁の散る絶妙な滞空時間…。浄瑠璃の絞り出すような叫び声に、セリフの背後に泣くように鳴る三味線の音…。
 どうしましょう、はまってしまいそう…。

 桟敷席には舞妓さんの姿もちらほら。とてもあでやかな空間です。でも、思ったより着物姿の人は多くありませんでした。「演目にちなんだ着物を着ているおしゃれな人が多い」と耳にしていたのですが。


(余談)
 今回は、息子と同行しました。宝塚、「オペラ座の怪人」は娘と行ったので、今度は息子の番ということで、「何が見たい?」って聞くと「京都にいるからには、やっぱり歌舞伎やろ!」ということで今回の顔見世となったわけです。ムッシュとはもっぱら映画ばかりでしたが、興奮冷めやらぬ私たちを見て、「次回はぜひ…」と思ったようです。
 「文芸復興の年にしよう」と年初に誓いをたて、いろいろ積極的に出かけて行った2008年。この幸せに心から感謝。