吉田修一「東京湾景」
- 作者: 吉田修一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/09/26
- メディア: 単行本
- クリック: 19回
- この商品を含むブログ (92件) を見る
なにがいちばんすごいって、登場人物たちの会話。浮遊した気持ちにまとわりつくせつなさ、距離をはかろうとする空気感がひたひたと伝わってくる。お台場、ゆりかもめ、東京湾の景色さえも知らない私だけど、まさに私は数日間その中にたたずんでいた気がする。
調べてみると、6年ほど前ドラマ化されていたらしい。けれどもその脚本のあらすじを読んでみると、原作とは全く別のものになってしまっていることにびっくり。原作中には、韓国に絡めた内容など皆無。登場人物も全然ちがう。ここまで、変えてしまって、「吉田修一」の名前を出すのは失礼やろ、という気がします。
心のつながりを求めているのに、距離を測りながら探りを入れながらしか近づけない2人。25歳と28歳の恋愛は、私にはまぶしすぎ、遠すぎ、せつなすぎ…。
久々に美しすぎるラストシーンに出会えた。「は〜っ」って大きなため息をのばした。