ビタミンF

ビタミンF (新潮文庫)

ビタミンF (新潮文庫)

 久々にゆったりと共感できました。
短編7編の主人公はすべて40歳前後の男性。家族構成もすべてよく似ている。「自分の人生こんなものか」という諦めにも似た感情を抱き始める頃の心の揺れを描いています。
 思春期を迎えた息子、娘との関わりかた。老いていく両親。しっくりいかなくなっている妻との関係。遠い青春の日の恋愛。それらを誰にでも手の届きそうなことばを使いながら、確かな表現力で描写しているのはさすがです。
 「ビタミンF」。作者いわく Family,Father,Friend,Fight,Fragile,Fortuneのキーワードを盛り込んでいるそう。「炭水化物やたんぱく質やカルシウムのような小説が片一方にあるのなら、ひとの心にビタミンのように働く小説があったっていい」
 2001年、直木賞受賞作