「重力ピエロ」伊坂幸太郎

 先日読んだ「アヒルと鴨のコインロッカー」のcatreonさんのコメントに刺激されて読みました。
 母がレイプされた末に生まれた弟、そしてその弟を自分の子として受け入れた父と「私」の3人が中心となり話が進んでいきます。
 おりしも驚異的な視聴率のTBS「華麗なる…」の設定もこの3人のような関係ですが、こちらは徹底的に排除しあっているのがこの本とは対照的。

 のっけからのこの重い設定と、兄と弟のマニアックな会話に、途中でめげそうになりましたが、でも、やはりこの作者の洗練されたユーモア感覚と、軽快な語り口の魅力は途中で捨てられません。
 なんと言ってもいちばん魅力的なのは、父・・・。ガンの手術を控えていても、全てを達観して大きな愛で二人を包んでいます。こんな親子関係ってありえるんだろうか。でも、そんな疑問をも超越してしまえるような、父の温かい視線が私の中での唯一の救いでした。