「ダブル・ファンタジー」村山由佳

W/F ダブル・ファンタジー

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 夫にとらわれて自由に脚本を書けない、さらに高みを目指して家を飛び出すあたりの段は興味深く、応援もしたくなった。入れ替わり立ち代わり、都合よく次々と男性が登場し、同時進行で関係を結び(それも了解済みで)、濃厚なシーンが延々と続く。
 えっ?結局、仕事はどうなったん?あんなに悩んで家を飛び出して、書きたいもん、書けたん?ここをきっちり描かないと、主人公はただの「色ぼけの35歳脚本家」で終わってしまうと思うんだけど。岩井を失ったところで全然同情もできない。
 あの唐突に登場したお坊さんって何だったん?

 「週刊ポスト」に連載されていたらしいけど、1話の中でそれなりの見せ場を設け、サラリーマン受けするシーンを盛り込まなければならない…っていうのが丸わかり。パーツ、パーツは繊細な目線で描かれていてさすがと思わせるのに、それらがうまくつながっていない気がする。特に後半はまったくまとまりがなく、ばらばらな印象。